本当に怖いのは。

フルート上級者

怖いものって、ありますか?
そしてそれは何ですか?
もうすぐハロウィーンだし…👻お化けとか?

留学中に怖い…と思ったことは
数えきれないほどあるのですが(それは追々)

一番怖いと思ったこと。

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私は留学中、2つ音楽院に行っていたのですが
帰国直前に師事していた先生のクラスでの話。

先生は頭のキレも感性もとても素晴らしい方で、
一回のレッスンを終えると
楽譜から音楽が立体的に3Dで見えてしまうような、
目から鱗のアドバイスをくれる先生でした。

レッスン後には
今まで見えなかった音楽が見えるようになる、
音符が踊っているように見える、という…お化けのようですが(笑)
怖いというよりすごい感動体験でした。
ただ、ご自身はフルートを売ってしまい(これを聞いた時点でビビる)
今は演奏しておらず、指揮者として活動しているという異彩を放つ方でした。

だから師事して最初の頃は
先生、そんな風に言葉で言うのは簡単だけど、
実際に吹いてみてくださいよ!と反抗的に思うこともあったけれど、
(思っただけね、言ってない)
投げかけてくれた言葉の意味を一週間かけて解読すると
沢山のヒントがあって。
言葉に導かれるようにして日々学んでいきました。

そして「怖い」と思った出来事があったのは
最後のコンクール前のレッスンでのこと。

同じ課程では、私ともう一人フランス人の女の子がいて
同じ課題曲だったので、お互いを聴講していました。
(聴くのも大事な勉強になります。)

最初に吹いたのは私。

自分が色々と考えた表現を先生に音で問いかけたのですが
もうボロボロ…
相変わらず厳しいレッスンでした。
それでも、先生の言葉や冷静かつ真剣な目から沢山のことを学び、
アドバイスを心に刻んで、
ぐったりして自分の席に戻りました。
次にクラスメートの番。
フランス人の子が吹いたのですが。

え…?

と思うほど吹けていない。
なんというか、譜読み段階という感じ…。
練習したのかな、これは先生の反応が怖いわ、
と、先生の顔とその子を交互に目で追いながら聴いていました。

吹き終わって、
さあ~これは絞られるぞーと(わくわくしながら)思っていたのですが
その後呆気にとられる展開に。

まず、先生は無言。
そのあと、にこやかに笑いながら
「なんか、ここって空調あったっけ?
ああ、そこの管に空気通ってたっけ?」というような謎の発言。

え?どういうこと?怒らないの?

何故配管の話に!?
ああ、身体の管の話しか?
食道か?なんなんだーーーっ

と考え込む私をよそに
クラスメートはにこやかに先生と話しをしていて
明らかに「言い訳」をしていました。

忙しくて、とか、吹いているとこうこうこうなっちゃって、とか。

やり取りを聞いていて、ようやく判明したのが
あまりにもその子が吹いた音もひどく、表現も無かったので
先生は例えとして

「今、聞こえた音は、フルートの音じゃなくって、
音楽なんかじゃなくって
そこら辺の管に空気が通った音がしただけ」
と言っていたのです。

こーーーーわーーーーーーーーーいいいいいいい!!!

そんな内容、そんな例えで言われたら
私だったら白目剥いて卒倒しちゃうーーーーー!!

でも、私が一番怖いなと思ったことは。

そのクラスメートがその話を
あまりにも自分のこととして受け止めていないこと。
笑顔全開で、自分の問題を理解しようとしていないこと。
その「姿勢」を先生は演奏を聴いた時点で瞬時に察知し、
敢えてそういう表現(話し方)で
その子に気付いてもらおうとしたのに、それに気付いていないこと。

自分の状況に「気づいていない」ということ。

もうレッスンの最後の方では
私はその状況が分かったので、顔は青ざめるばかり。
それでも、そのクラスメートは笑顔全開で言い訳のオンパレード。
先生は呆れ顔。

という3者3様の恐ろしい構図。

ああ、この先生は、生徒が自分が教えるレベルまで行っていないと
その門戸を開かないんだ。
相手にさえしないんだ。

こ、、こわい。

この時、自分もボロボロだったけど
唯一、「音楽」を先生にぶつけることができて、
今回はナントカそこを拾ってもらえたんだ…
危ういところだったぜと思ったのでした。
(私も余裕ぶっている場合ではなかった)

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何の分野でもそうだと思います。
「先生が教えてくれなかった」
「全然身につかなかった」
結構受け身の意見を耳にすることがあるけれど、
学びの主体はいつも「自分」にあって
自分が先生からノウハウを奪い取る!くらいの勢いでいかないと
物事は身に付かない、と私は思います。

私の先生はそのことをごくシンプルに、
そして超シビアに実践していただけのこと。
教わり、教えるという関係の原点においては
ごく当然のことのようにも思います。

そして、やっぱり「誠実さ」がなければ
物事は達成できないということも学びました。
やりたくてやっているはずなのに
そこに言い訳が入った時点で終了です。
そう、やるのはいつだって自分。
誰かをあてにしたらその時点で成長はない。

ああ、気づかないって怖いことだな~と。
自分の学ぶ姿勢ももう一度見つめなおそう!
と、言い聞かせて乗った帰りのメトロで、

私の乗った車両のドアが開いたまま
ものすごいスピードで走り始める、っていう。

し、、、死ぬ…!!
飛ばされる!!
と、必死に手すりに掴まった記憶もこれまた鮮明(笑

超超超、怖かった!
リアルホラーですね。
ドア側にいなくて良かった…

パリのメトロ、今は新しくなってきたけど
手動でドアを開ける旧式は不具合がいっぱいありました(笑。

笑えないんだけど。あはは…

そんな濃い一日だったから、今でもよく覚えています。

そして、教えるという立場になることが多くなった今、
学びの姿勢について改めて思うことも多くなりました。

相手にされないってお化けより何より怖いんだから!!
その状況に気づかないって、
ホラー映画以上に怖いんだってば!!!
まだ「げきおこ」される方がマシ。

と。怖いの意味が違うじゃん、と突っ込まれそうですが。

今吹いた音、先生だったらなんて言うだろう、
この音楽に誠意を持って向き合えているかな。

と、自分で自分をレッスンしていく
学びの姿勢が備わったこと、感謝しています。

ぶつかったらぶつかっただけ返してくれる先生と学ぶって素晴らしいこと。

でも、その過程で

「気付かない」って。

とっても、怖いこと
です。

人と人の関係も同じ。
いつだって向き合っていこう。

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