きたかぜ と たいよう

「私は人前で堂々と演奏することができません。髙橋さんみたいに自由に演奏してみたいです。」

「フルートがこんなにも大きな音で響くのが驚きました。私が演奏しているのはフルートではないのですが、いつも部活では『もっと大きい音を出して!』と言われるのですごいなと思いました。」

コンサートに来てくれた生徒さん達からこんな感想を頂きました。
そんな風に感じてくれて嬉しいです。ありがとうございます!

中学校の部活で楽器を始める、という方多いのではないでしょうか。
最近では大人になって楽器を始める方も増えています。
私は最初ピアノ専攻で、大学時代にまさかのフルートへ転科。
色々な悩みを抱え、日々試行錯誤でした。
(今でも課題を見つけては試行錯誤ナウですが)

楽器を始めた頃や、始めて数年は
色々悩みますよね。

今回は「息」ということに注目したいと思います。

「きたかぜ と たいよう」という童話を知っていますか?
北風と太陽のどちらが「強い」のか、
旅人の服を早く脱がせた方が勝ち!と勝負をするお話。

ご存じの通り、旅人の服を吹き飛ばそうとする北風より
温かくポカポカと日差しを注いだ太陽の方が、
旅人の服を脱がせることが出来ます。

これって、楽器を演奏する時も同じことが言えると思うのです。

初めて師事したフランスの師匠に、

「Yuki、君は息のスピードが速すぎる。冷たい息ではなくもっと温かい息を使いなさい。」

と、窓にハーッと息を吹きかけて白く曇らせながら言われたことがあります。

最初は「スピード持って吹かないと音鳴らないじゃん~」と思っていたけれど、
時を経て師匠が言っていた意味が分かるようになりました。

分かるようになるまで「ああでもないこうでもない」と模索し続け、
ようやく一つの型が見えてきたのですが

まず前提として、どんな人もその人の「自然な良い音」を持っているのです。

大きな音を出そうとして、北風のようにものすごいスピードの息を吐いてしまうと
息も続かないし、音は自由になりません。
冷たい息だと身体も無理をして、肩も凝るし、きっとあちこち痛くなってしまうでしょう。
そうして音楽はどこかへ行ってしまい、響きが閉じ込められてしまう。

自分が自然な息を使う時に鳴る音が、その人の持つ「良い音」です。
それを見つけることがまず第一。
指の練習とか、大きい音以前に「良い音」を見つけて練習しないと意味がないのです。

じゃあ、自然な息を使えるようになるにはどうしたら良いの―――!!

簡単に言ってしまえば
体の使い方と脱力を知り、体幹をしっかり鍛え、保つこと。

身体が自由になると、自然な息が吐けるようになります。

意外にヒトは自分で思っているほど、自分の身体って自由に操れていないんですよね。

普段の生活でもあると思います。
友人とゆっくりおしゃべりしているときはリラックスして
ゆったりと呼吸しているけれど
緊張したり、嫌なことがあったりした瞬間、バクバクバクと鼓動が高鳴り
身体がこわばって、息が浅くなること。

楽器を持つということはそのこと自体とても不自然ですよね。
フルートなんて、左肩がぐいっと内側に入るし。

その不自然さを自然に出来る身体の使い方を知ること。
最終的に「楽器を演奏する」のではなく「楽器が自分の一部になる」ことです。

つまり、好きな友人とゆっくりおしゃべりしたりリラックスしている
その呼吸で楽器が吹けるようになることです。

そういう事を考えてくれる良い先生に見てもらうことが一番良い方法です。
良い先生は一目で身体の使い方や息の問題を見抜いてくれます。
教則本うんぬんではなく
あなたが自由になるための方法のヒントをくれるはずです。
個人個人、骨格も身体の癖も違いますから。

私も吹奏楽や個人の生徒さんのレッスンで一番最初に見るのは
身体の使い方です。

そこに着目していると楽器の問題ではなく、
身体や息の問題であることが多いのです。

そういう時は楽器を置いて、リアルに筋トレを一緒にしたりします。
楽器用スパルタ筋トレ、結構良いですよ(笑!

身体が無理をしていると、北風みたいな息しか吐くことができません。
太陽の息を使えるようになると、音楽が見えてきます。
自由になります。
堂々と自然に演奏できるようになります!

そして、太陽の息が使えるようになった時、
音楽の種類や場面によって
たま~にエッセンスとして、北風の息なんかを使えるようにすると
もっと良いでしょう。

何わけわからないこと言ってるんだこの人は、と思っている人も多いでしょう。笑
でも
今自由に演奏できてないな、とか
身体が固まってしまうな、とか
どういう風に身体を使ったらいいんだろう、とか
気になった方は是非コメントや問い合わせなどでどうぞー

私も色々遠回りして、苦労して、泣きながらも
ようやく自由になれる方法を見つけました。
私みたいに時間をかけなくても(時間をかける意義、というのもあるけど)
私が経験したことで何かが解決し、お役に立てるなら嬉しいです。

どんな人も自分の持つ「良い音」を引き出せるようになること、
音楽をする上で旅人が自由になることが一番です。

私は音楽との旅が嬉しすぎて、サボることしか頭を巡らないこの頃ですが
演奏者が自分を自由にコントロールして音楽を奏でられる世界がもっともっと広がったら
サイコー!!
ね。

5件のコメント

  1. 今日の由起先生のレッスンはまさに体の使い方、脱力がテーマでしたね。
    このブログの意味がよくわかります。
    しかし、身につけるのは大変ですね。
    頑張ります!
    今後とも、宜しくお願い致します!

    1. Masayoshi Hahimoto さま

      いつもコメントありがとうございます♪
      そうですね、脱力の「加減」が難しそうでした。
      抜き過ぎてふにゃふにゃになってしまっては勿論ダメですし
      自分の身体と向き合って、ニュートラルな状態を知るところから、ですね。
      フルートを吹きに行くのではなく、
      大好きなフルートが自分に近づいてくる、楽器を引き寄せるようにして
      構えてみましょうね!
      でも脱力がうまく行っている時はすごく響いて、いい音でした!
      その状態が継続できるように今後も頑張りましょう^^

      1. ありがとうございます。良い時のイメージを忘れずに再現できるように、頑張りたいと思います❣️
        10/12の本番、盛りだくさんですが頑張ります。
        いつも熱心なレッスンをして頂きありがとうございます。

  2. 自分で思っているほど自分の身体を操れないというのは、日常で頻繁に感じることですね。自分ではフォルテシモを出しているつもりでも実際は少し大きくなっただけというのと同じように、人に笑顔でほほ笑んだつもりでも無表情に近く冷たく感じられたり、愛情を伝えたつもりでも、表現の仕方を間違えて逆効果であったり。音楽を学べば学ぶほど身体の操り方、表現の重要さが理解でき、訓練をすることで実際の生活でも役に立つようになると思います。私も自分の「常識」にとらわれず、音楽を通じてより成長していきたいと感じました。

    1. Eisukeさま
      コメントありがとうございます!
      返信遅くなりごめんなさい。
      本当に、音楽から学ぶことって計り知れないですよね。
      ジャンルを問わず、音楽と真剣に向き合っている人とは
      通じる部分があったり、
      音楽とは別ジャンルの表現者であっても
      共通する部分があると、話していて嬉しくなったりします。
      音楽が自分の世界を拡げてくれ、人生を豊かにしてくれるって
      ホントだー!と思います。
      Eisukeさんの好きな音楽もぜひ聞かせてくださいね^^

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